栗で染める・草木染めとphの関係


今年も栗の渋皮煮を作りました。(うつわはFさんからの笠間みやげ)  
去年《2007-10-30 - SOU WORK の 染織日記》は砂糖の分量の多さに不安になって少なくしたら中途半端な味になってしまったので、今年は分量通りに・・・と思っていましたがやっぱり大量の砂糖を目の前にすると罪悪感感じてちょっと減らしました。(そのくらい減らしたって何も変わらないのに)
美味しくできました、と思う。そして見た目が美しい!
栗は3回ほど茹でこぼすのですが、その時の煮汁がものすごく濃い赤茶色をしています。
去年はその煮汁で絹糸を染めてみましたがあまり染まりませんでした。
煮汁に重曹が入っているからかな、と思い調べてみると 重曹=炭酸水素ナトリウムはアルカリ性でした。
アルカリ抽出をしていたんですね。測るとphは10くらい、強いアルカリでした。
アルカリ抽出をした場合、染液を中性にしてから染めに入るので、酢酸を入れて中和させてから染めてみました。
色は去年よりもずっと濃く染まりました。
染まりましたが好みの色かというと・・・、美しいかというと・・・。
そして染めている時のものすごい色(まるでうがいに使うイソジン)と匂い(酢酸が入っているので)、バケツについた色は落ちにくいし、ちょっと大変でした。
それでも好みの色になったのならそんな事は気にならないんでしょうね。(どうしてもイソジン色に見えてしまう・・・)
来年はどうなるか。染められるのはほんの100gです。



アルカリ抽出の方法が書いてある本があるけれど、なぜそうするのかは書いてないのでよくわかりません。
アルカリの水でお肉を煮ると柔らかくなって、酸性の水は素材の味を残すって何かでやってたからアルカリはきっと細胞を破壊してくれるとかそういうことで中の成分が出てきやすいということなんだと思います。
天然染料の染めを研究している先生によると、色素の種類によって適した抽出のphがあるそうです。
そして色素の種類によって染まりやすいphは違うとあります。
必ず中和させなければならないわけではないようです。
栗の場合は中性が適していたのかもしれません。
アルカリ抽出の方が濃い色が出るように見えますがそれは呈色反応(ていしょくはんのう)のせいでもあります。
紅茶にレモン(酸)を絞った時に色が明るくなるのが呈色反応です。
アルカリを加えるとまたもとの色に変わります。
色素が変化したわけではなく見え方が変わっただけです。




色素とphの関係は媒染剤が出てくるともっと重要になってきます。
媒染剤(金属塩)は繊維とも色素ともくっつきやすい性質なので繊維と色素の仲立ちとなってくれます。
多くの媒染剤は酸性ですが、色素と結合すると不溶性になる(顔料になる)と同時に酸が離れます(水酸化金属になる)。
逆に不溶性の色素(顔料)に酸やアルカリを加えると金属と酸が結合し色素は水溶性になります。
この性質を利用したのが草木染めです。
難しいけど「水に溶けた色素を繊維の中で水に溶けない性質にさせる」というのが草木染めです。
色素が繊維の中で水に溶けない状態になるから水で洗っても落ちないんですよ!
「ほぉ〜!そうだったのか〜」って感動しませんか?
ということはアルカリ性や酸性の水で洗ったら水溶性になって落ちてしまうんです。
それで中性洗剤を使うんですね。
納得、納得。
汗も中性ではないので草木染めは汗にも弱いんですね。